【コラム】遺留分侵害が問題になるケースと権利行使の方法について

遺留分について

遺留分の制度的な詳細については前回のコラムをご覧いただきたいと思いますが、簡単にまとめると、被相続人の配偶者や子、場合により直系尊属(親や祖父母など直系の先祖のことを民法ではこのように言います)に認められる固有の相続分のことです。遺留分を侵害された場合には、遺留分権利者は侵害者に対してその分の金銭の支払いを求めることができます。これを遺留分侵害額請求と言います。

なお、以前は類似の制度として遺留分減殺請求がありました。遺留分減殺請求は、遺留分権利者が侵害者に対して意思表示をして行使する点では同じですが、それにより権利変動が生じると考えられていました。すなわち、各遺産について遺留分を侵害していた限度で権利が変動し、不動産などが共有の状態になると解されていました。しかし、この仕組みだと、その後の共有の解消にも労力を割かないといけないため、必ずしも効率的とは言えませんでした。そこで、比較的簡便に解決できるように、金銭債権化された(金銭の支払いを求める仕組みに変更された)わけです。

したがって、今は、以前と比べて、わかりやすい仕組みになったと言えるでしょう。

遺留分を認められるのは誰?

遺留分はすべての相続人に認められるわけではありません。すなわち、配偶者や子、および、直系尊属(親・祖父母)などが法定相続人になる場合の直系尊属、には認められますが、兄弟姉妹には認められません。代襲相続についても同様に、代襲相続する場合の孫には認められますが、甥や姪が代襲相続する場合には認められません。

したがって、兄弟姉妹やそこからの代襲相続の場合には、遺留分はないということになります。

遺留分はどう計算する?

遺留分は基本的に2分の1ですが、直系尊属(親や祖父母など直系の先祖のこと)のみが相続人の場合には3分の1です。複数の相続人がいる場合、法定相続分をこれにかけます。例えば、被相続人Xに妻A,長男B,次男Cがいた場合、次男Cの遺留分は2分の1に法定相続分4分の1をかけて8分の1となります。

遺産額はどう計算する?

遺産の額ですが、相続開始時(亡くなったとき)にあった遺産の他、相続開始前1年間に贈与された額(相続人に対する贈与の場合は10年間。また、遺留分権利者の権利を侵害することを双方が知っていた場合は期限なく)を加えたものを用いることになります。

具体的に問題になるのはどういう事例?

では、具体的にどのような場合に遺留分の侵害が問題になるでしょうか。

遺言による遺留分の侵害

まず、典型的なのは、「遺留分を侵害する遺言書があった場合」です。すなわち、具体的にどの遺産をどの相続人に相続させるか記されていてその通りにしたら遺留分を確保できない場合や、相続分の指定がありそれが遺留分を侵害している場合です。例えば、法定相続人として子2名がいる場合に、遺産の全部を片方の子に相続させれば、もう一方の子の遺留分が侵害されます。なぜなら、この場合、それぞれの子は4分の1の遺留分を持つからです。

また、上記の例で遺産は不動産甲(時価1億円)と預貯金100万円だけの場合に、遺言書で、子Aは不動産甲を相続し、子Bは預貯金をすべて相続する、と書かれていたとすると、子Bの相続できる遺産は4分の1を下回るので、遺留分を侵害されています。

このような、遺言書による遺留分の侵害は典型的な事例と言えるでしょう。同様に遺言書によるものとして、遺産を法定相続人以外の第三者に遺贈することで遺留分が侵害される場合もあります。

生前贈与による遺留分の侵害

また、別の類型として、生前贈与による遺留分侵害もあり得ます。例えば、被相続人が亡くなる数か月前に遺産の全部を法定相続人以外の第三者に贈与したとしましょう。そして、亡くなったとき、遺産はまったくなかったとして、法定相続人として配偶者と子がいたとすると、配偶者と子は遺留分を持ちますので、それぞれ遺留分侵害を主張できます。もちろん、贈与を受けた側が法定相続人の場合も同様です。

なお、贈与の場合は、贈与を受けたのが法定相続人であれば最後の10年間、そうでなければ1年間、の贈与のみが対象となりますが、双方が遺留分権者の権利を害することを知っていた場合は期間の制限なく対象となります。それ以外の贈与については、遺産の額の計算には含まないことになります。

ただし、遺留分権利者が持つ遺留分の額を計算する際には、時期にかかわらず、特別受益として贈与を受けた分は差し引くことになります(民法1046条2項1号)。

遺留分はどうやって請求する?

遺留分の請求をするには、金額を計算して、それを内容証明郵便などで相手に伝えることで請求します。もっとも、内容証明郵便でなくても法律上は良いのですが、請求した証拠を残すためにも内容証明郵便(配達証明付き)を使うと良いでしょう。時効の問題もあるので、その点は重要です。なお、本人が送るのではなく弁護士に依頼することもできます。

遺留分はいつまでに請求すればよい?

遺留分侵害額請求ができる期間は短いので注意が必要です。すなわち、被相続人が亡くなったことと侵害する贈与や遺贈(遺留分を侵害する財産の承継や相続分の指定の遺言も同様)が行われたことを知ってから1年以内に行わないと消滅時効にかかり、請求できなくなってしまいます。被相続人の死亡から10年を経過した場合も同様です。いずれか早いほうを経過したら時効で請求できなくなるので(通常は前者の1年の期限のほうが先に来ると思います)、請求する場合、速やかに弁護士に相談するなど行動をする必要があると考えられます。なお、この際には、正確な金額が分かっていなくても、遺留分侵害額請求をすることを伝えれば問題ないと考えられています。

*意思表示は到達しないと効力を要しないので、郵送で行う場合、期間までに必着です。

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