遺産分割の基礎知識

1 遺産分割とは

遺産分割とは、亡くなられた方(=被相続人)が、亡くなった時点で所有していた財産を、相続人の間で分配する手続一般をいいます。すなわち、不動産、車、などの資産は所有者が亡くなると、相続人が複数いる場合、相続人間で民法上の共有の状態になります。また、最近、最高裁判例の変更があり、預貯金も共有(観念的なものなので準共有と考えられます)となることが明らかにされました。

 不動産等が共有のままでは、全員の同意がないと売却などの処分ができませんし、賃貸などの利用にも制約があります。また、預貯金もその状態だと全員に合意がないと引き出せません。そこで、自由に利用したり処分したりするためには、どの遺産をだれが相続するのかを決めることが必要となってきます。その手続きを、遺産分割、と言います。

 

2 遺産分割の手続(総論)

遺産分割の手続としては、大きく3つに分かれます。

【3つの遺産分割】

  1. 遺言による遺産分割
  2. 相続人間の協議による遺産分割
  3. 裁判手続(調停・審判)による遺産分割

 

3 遺産分割の手続(各論)

① 遺言による遺産分割

被相続人は、遺言で、遺産の分割方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託することができます(民法908条)。遺言に具体的にどの遺産を誰に相続させるかが記載されており、すべての遺産について網羅して定められていれば、その通りに分割されるので、別途協議する必要はありません。

一方、遺言に、遺産の一部の分割方法のみ定められている場合には、定められていない遺産について、②③の方法による遺産分割を行う必要があります。また、遺言の内容が相続分の割合だけを定めていて具体的にどの遺産をどの相続人が相続するのか記載されていない場合も、遺産分割協議が必要となります。

 

② 相続人間の協議による遺産分割

相続人は、被相続人が遺言で分割を禁止した場合を除き、他の相続人と協議して遺産分割を行うことができます(民法907条1項)。

この協議は、全相続人の間で行い、分割方法に全相続人が合意する必要があります。民法上は口頭の合意でも有効ですが、不動産の登記には遺産分割協議書に実印で押印し印鑑証明書を添付する必要があり、また、預貯金の引き出しや株式の名義変更等にも原則として同様の書面を求められるため、通常は、書面(遺産分割協議書)を作成します。

合意できなかった場合には、解決するためには、③の方法による遺産分割を行う必要があります。

 

③ 家庭裁判所での手続(調停・審判)による遺産分割

相続人間で遺産分割協議が調わない、又は協議そのものができない場合には、相続人は、遺産分割の調停を家庭裁判所に申し立てることで、遺産分割を請求することができます(民法907条2項)。

家庭裁判所での調停では、調停委員会の下、当事者間での協議が行われます。

協議の結果、当事者間で合意に達した場合には、調停調書が作成されます(家事手続法268条1項)。この調停調書には、確定判決と同一の効力が認められます。

他方で、合意に達しない場合には、調停は不成立として終了し、審判手続に移行します(家事事件手続法272条1項、4項)。 当事者が審判を請求することも可能です(民法907条2項、家事事件手続法191条1項、49条1項))。

  審判においては、裁判所が遺産分割方法を決定します。その際、裁判所は、民法906条「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」との規定に従い、判断を下すことになります。すなわち、審判では、法定相続分を基礎に、寄与分、特別受益などを考慮して具体的な相続分を決めますが、その上でどのように分割するか(どの相続人がどの遺産を相続するか、代償分割を用いるか、換価分割とするか、など)には、上記のように一切の事情を考慮して裁判所が決定することとなります。

 家庭裁判所の審判に不服がある場合は、告知から2週間以内即時抗告をすることで高等裁判所による審理を求めることができます。

遺産分割手続きにおける弁護士の役割

これらいずれの手続きにおいても、弁護士が代理人を務めることができます。すなわち、弁護士は代理人として交渉を行なうことができるし、調停や審判に移行してもやはり弁護士は代理人を務めることができます。また、準備として相続人の範囲を調査したり、実際に他の相続人と連絡を取るということも可能です。このように、裁判所を通さない交渉の段階でも、家庭裁判所での手続きや高等裁判所での審理でも代理人としてご依頼者様のために活動することができるのが弁護士の特徴です。

 なお、審判に対して不服がある場合には告知を受けてから2週間以内に即時抗告をすることで高裁で審理されますが、この場合にも弁護士は代理人を務めることができます。

 弁護士は、専門的知識に従って他の相続人と交渉したり裁判所に主張を出したりすることができること、本人の代理人として相手方(他の相続人)と交渉するため、ご本人様が他の相続人直接協議する必要はなくなる、というところが重要だと思います。

 

4 税理士・司法書士との関係

税理士や司法書士の事務所HPなどで、遺産分割の広告を見ることがあります。遺産分割における、税理士・司法書士・弁護士の位置づけは以下の通りです。

 書類作成交渉裁判手続代理特徴
税理士△(議論あり)××税務手続が主
司法書士×△(簡易裁判所)登記・供託が主
弁護士交渉や調停・審判など、各種業務が可能。

なお、一般的に言うと、弁護士は遺産分割の交渉や調停、審判、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)、遺言無効確認訴訟、などを行う、税理士は税の計算と申告を行う、司法書士は登記申請を行う、ということが多いと考えられます。そこで、遺産分割の交渉や調停を弁護士に依頼しつつ、納税は期限があるので並行して税理士に依頼し、遺産分割について合意に達したら司法書士に登記をお願いする、ということがよく行われます。(弁護士に司法書士や税理士を紹介してもらうことも可能です)

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