【コラム】相続人の中に行方不明の人がいた場合

1、問題の所在

相続人の中に行方不明の人がいた場合、そのままでは遺産分割協議ができません。調停を申し立てても送達できないため、そのままでは調停を開始することができないことになります。では、どうすればよいのでしょうか?

 

2、不在者財産管理人制度

 不在者財産管理人制度は、民法25条に定められた制度で、「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったとき」に、利害関係人等の請求により管理人が選任される制度です。

 家庭裁判所が選任した不在者財産管理人は、保存行為(民法103条1項)や性質を変えない範囲での改良行為(民法103条2項)以外の行為を家庭裁判所の許可を得て行うことができます(民法28条前段)。それゆえ、遺産分割交渉も家庭裁判所の許可により行うことができます。

3、失踪宣告

 失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないときに利害関係人の請求により失踪の宣告がされる(民法30条1項。普通失踪)制度です。また、「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないとき」にも同様に利害関係人の請求により執行宣告がなされます(民法30条2項)。

 効果としては、普通失踪では、失踪から7年がたった時点で、特別失踪では危難が去った時点で、死亡したとみなされます(民法31条)。

4、不在者財産管理人選任と失踪宣告の違い

 不在者財産管理人選任は、生存しているが財産を管理する人がいないという前提で、財産の管理のために家庭裁判所が行う仕組みです。一方、失踪宣告は、本人の死亡を擬制するものであり、法律上死亡したとして相続が開始します。

 したがって、相続人の1名について不在者財産管理人が選任された場合、不在者財産管理人が本人に代わって遺産分割協議に参加します。

  一方、失踪宣告では行方が分からなかった相続人が死亡したとみなさるため、新たに相続が発生します。したがって、その相続人と交渉する必要が生じます。なお、どの時点で死亡したとみなされるかが普通失踪と特別失踪では違う点に注意が必要です。

 また、不在者財産管理人はあくまで不在である本人のために交渉を行うので、本人に不利な遺産分割に応じることはできないこととされています。一方、失踪宣告により新たに相続人になった者にはそのような制限はありません。

5、まとめ

  不在者財産管理人選任と失踪宣告は行方不明の人がいる場合に遺産分割協議を進めるために用いることができる制度という点では共通しています。しかし、上記のように要件にも効果にも大きな違いがあるので、いずれを申し立てるかは、法律的な観点から十分な検討が必要です。

 また、行方不明と思っていても弁護士による調査で行方が判明する場合もあります。職務上請求により戸籍や住民票の調査が可能であり、それらや、他の相続人に聴取するなどの方法で、所在不明だった相続人と連絡が付くこともあります。ただ、手を尽くしてもなお行方が分からない場合に初めて不在者財産管理人選任や失踪宣告の申し立てを検討するべきです。

 このような調査や検討は一般の方が行うことはそれなりに大変です。そこで、弁護士に相談、依頼することがお勧めです。

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