遺産・相続
親の面倒をよく見た子はたくさん相続を受けられますか?
A.寄与分といって、遺産分割において考慮する仕組みがあります。寄与分が認めらると、まずその金額の分だけ、遺産から先に差し引いて計算する(その分を計算上先にもらう)ことができます。例えば、遺産が5000万円で寄与分が1000万円なら、まず1000万円を自分の分としてもらい、残りを法定相続分で分けるという計算をすることができます。
ただ、特別の貢献によって被相続人の財産の維持や増加に寄与した場合しか認められないので、必ずしも認められるとは限りません。被相続人の世話をしたことで寄与分を認めてもらいたい場合、通常の扶養の範囲を超えて特別の貢献があったことが求められます。それゆえ、同居して一般的な家事をしていたという程度であれば認められることは難しく、例えば、仕事をやめて介護に専念したというような程度のものが求められます。その場合は、職業介護人を頼まずに済んだ分財産の減少を防いだ(維持に寄与した)として、寄与分が認められる可能性が高くなります。また、介護による寄与の場合は、介護保険の基準などを参考に金額を算定することになります。
なお、寄与分は、介護などで面倒を見た場合に限らず、親の事業への貢献などでも認められることがあります。
また、認めてもらうためには、交渉であれば事実上主張して合意に至れば問題ないのですが、調停の場合は寄与分を定める調停を申し立てることになっており(ただし、遺産分割の調停の中で協議して合意できれば、問題はないと思います)、審判の場合は、寄与分を定める審判を申し立てないといけないことになっています。特に審判の場合には、寄与分を定める審判を申し立てないと、寄与分を考慮しないまま審判が出てしまうと思われます。
寄与分が認められる場合は、その分を遺産の全体から先にもらって残りを法定相続分で分けるという計算をすることになります。例えば、遺産が1000万円で相続人としては被相続人の子2名(Aさん、Bさんとします)の場合、Aさんに200万円の寄与分が認められたとします。そうすると、Aさんはまず200万円分を相続し、残りの800万円を2等分して、Aさんはさらに400万円を相続、Bさんは400万円のみを相続する、という計算になります。そこで、この場合、Aさんは600万円、Bさんは400万円を相続する計算となります。
このように、親などの被相続人の面倒をみていると寄与分として多めに相続できる場合がありますので、該当すると考えている場合は、根拠や証拠となる資料を添えて主張してみると良いでしょう。