相続法改正でここが変わる

約40年ぶりに相続法が改正されることとなりました。本ページでは、その改正により変わる点について簡単に説明します。なお、以下の制度改正は順次施行されているので、どの時点の相続から適用されるのかについて注意が必要です。(本ページは平成30年改正についての解説です)

1 配偶者居住権

(1) 背景

例えば、夫婦(子供1名あり)が自宅(名義人:夫)に住んでいた場合で、夫名義の財産が自宅(時価2000万円)と預金(100万円)のみの場合を想定します。夫が亡くなった場合に、相続人は妻と子の2名です。

この時、法律上の相続持分は、妻と子でそれぞれ2分の1ずつです。そして、妻が自宅に住み続けるため、自宅を妻所有になる一方で、自宅時価の半額である1000万円と預金半額の50万円を子に渡すことになります。

しかし、このように遺産分割をすると、妻は従前どおり自宅に住み続けられる一方で、その他の財産、特に現金を受け取ることができず、今後の生活に不安が生じてしまいます。

このような状況に対応するため、配偶者居住権の制度が創設されました。

 

(2) 内容

例えば、自宅の所有権を、「配偶者居住権」と「負担付き所有権」とに分け、前者を妻に取得させ、後者を子に相続させるということができます。

その結果、妻は不動産の時価半額を子に渡すことなく預金の半額を受け取ることが可能になります。

*これはあくまで一例です。

この制度は、遺言や遺産分割で認められる必要があり、自動的に発生するわけではありません。

 

2 配偶者「短期」居住権

1のように被相続人と同居していた場合、配偶者は、「相続開始から6カ月」又は「自宅を誰が相続するか決定した日」のいずれか遅い時期まで、自宅に住み続けることが可能になりました。これは、上記の配偶者居住権と異なり、要件を満たせば自動的に発生するものであり、遺言や遺産分割協議での設定は必要ありません。

 

3 自筆証書遺言の様式緩和

これまで、自筆証書遺言は、添付する財産目録も含めて、すべてを自書(手書き)する必要がありました。財産の種類が多い人などは、全ての作成を自書することが一苦労な一方で、財産目録まで自書を義務付ける必要性について疑問が呈されていました。

そのような疑問に対応して、財産目録に限り、一定の要件を満たした場合にパソコンで作成したものでの遺言作成が認められました。(それ以外の部分は自筆しないといけないので要注意です)

また、自筆証書遺言について、法務局で保管することも可能となりました。

 

4 相続人以外の者による介護に対する金銭的評価(特別寄与料)

相続人でない親族が、介護により看病に貢献する、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をするなどした場合には、相続人に対し金銭請求が可能になりました。すなわち、民法1050条は、「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族」は「相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」と定めています。

 寄与分が相続人に限られているのとは異なり、相続人ではない親族についても認められるのがこの制度の特徴です。

 なお、家庭裁判所に処分を求めることもできますが(1050条2項)、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したとき」はできない旨、定められていますので、期間制限が短いことに要注意です。

5 預貯金の一部払い戻しが遺産分割前でも可能になりました。

 平成28年の最高裁判決により、預貯金は可分債権として当然分割されるのではなく、遺産分割協議の対象とされることが明らかになりました。しかし、そうすると、相続人は遺産分割協議が合意に至るまで預貯金を引き出せないことになってしまい、生活に困窮する恐れがあります。そこで、簡易な手続きで預貯金の一部を引き出せるようにしたものです。ただし、遺産分割前に引き出せるのは法定相続分の3分の1まで、かつ一金融機関について150万円まで、に制限されています。

6 自宅の生前贈与が特別受益の対象外になる可能性

以下の要件を満たす場合には、原則として、遺産分割の手続上、自宅の生前贈与を考慮しないことが可能になります。すなわち、持ち戻し免除の意思表示があったと推定されることとなりました(民法903条4項)。

  1. 結婚期間20年以上
  2. 配偶者に対する生前贈与

ただ、あくまで推定なので、他の相続人は被相続人が相続時の清算を前提にしていたことを立証できれば、推定を覆して、特別受益の持ち戻し(903条1項、2項)を認めさせることもできます。

7 遺留分関連

 遺留分減殺請求が、遺留分侵害額請求に変わりました。内容としては、これまでは各遺産について遺留分に相当する分を請求権者に引き渡さないといけないという仕組みでしたが、今後は侵害された額についての金銭的な請求権に変わります。これにより、手続きは従来より簡素なものになるといえるでしょう。なお、時効期間や除斥期間に変更はありません。

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