遺産分割の前提問題とは?
相続において、前提問題と呼ばれるものがあります。これは、遺産の範囲や相続人の範囲、遺言の有無、など遺産分割協議の前提となる事項のことを言います。これに争いがある場合は、原則として、審判の前に通常の訴訟で確定させておく必要があります。なぜなら、遺産分割の審判には既判力がないため、もし、遺産の範囲について何らかの前提で判断を下しても、後から訴訟で覆される恐れがあるからです。そこで、遺産の範囲に争いがある場合は、当事者が確認訴訟を起こして特定の財産が遺産に属するかどうかを明らかにする必要があります。
遺産の範囲に争いがあるというと不思議に感じられるかもしれませんが、例えば、ある土地を被相続人が生前に相続人の一人、あるいは、第三者に贈与していたかどうか、が争われる場合が考えられます。贈与がされていれば遺産には含まれないし、されていないのであれば遺産になるので、相続人の利害に絡んでくることになります。このような場合に、その土地が遺産の範囲に含まれることの確認を求めて訴訟をする、ということが考えられます。もし、その点に争いがあるのに調停を申し立てると、家庭裁判所は調停を進めずに、まず裁判で相続人の範囲を明らかにするように求めてくることが考えられます。
その他、特定の人が相続人に当たるかどうか、あるいは、遺言が無効かどうか、ということについても確認訴訟が考えられます。
いずれにせよ、先に訴訟を行う目的は、遺産の範囲や相続人の範囲を確定させることであり、訴訟で最終的な解決が付くわけではありません。その後の遺産分割については、通常と同じく、交渉や調停、さらには審判、という流れの中で解決されていくことになります。