遺産分割

遺産分割の交渉や調停などについて

遺言がない場合、遺産分割は多数決で決めるんですか?

いいえ、相続人の全員一致で決めなくてはいけません。

遺産分割に期限はありますか?

必ず何年以内に分割しないといけないという意味での期限はありません。しかし、寄与分、特別受益の主張は被相続人が亡くなってから10年経つとできなくなります(令和5年4月施行の改正法による。なお、それ以前の相続については、経過措置があり、期限が異なる場合があります)。また、登記の義務や相続税の申告・納付にはそれぞれ期限があります。

交渉の段階で弁護士に依頼することはできますか?

 はい、可能です。当事務所でも、遺産分割の交渉の御依頼を頂いて解決した事例が多くあります。

交渉の段階で弁護士に依頼するメリットはどういうところにありますか?

 自分の権利をしっかりと主張することができる、他の相続人に筋の通らない主張をされていた場合も対抗できる、弁護士が代理人として交渉するのでご自身は苦手な共同相続人(他の相続人)と話さなくて良くなる、などが挙げられます。

 遺産分割には、遺産である不動産等の評価、寄与分や特別受益の主張、その他、ややこしい争点が生じることもありますが、弁護士にご依頼頂ければ、それらについては弁護士が専門的な知識を活かして交渉を行います。このような専門家の力を借りることができる、というのが大きなメリットです。

子供の妻にも財産を引き継いでほしいのですが、嫁に来たのだから相続権はありますよね?

いいえ。民法では、相続権は「嫁」「婿」にはありません。しかし、相続させる方法はあります。それは、養子にするという方法です。養子は子として扱われるので、相続権が生じます。

 もう一つの方法は、相続ではなく遺贈という形で解決することです。遺贈は一般的な方法としては、遺言書を作成してその中で指定するという方法で行われます。

 なお、改正法適用の場合は、特別寄与料の請求ができる場合があります。ただ、この仕組みが適用されるのはあくまで無償の労務提供で特別の寄与をして財産の維持また増加に寄与した場合だけであり、例外的、かつ、請求できる範囲も限られているので、しっかりと遺産を承継させたいなら、やはり、養子にするか遺言で遺贈するか、という方法をとることが望ましいと考えられます。

養子の人数に制限があるって本当ですか?

民法上はありません。ただ、相続税の計算において子として数えられるのは(実子がいる場合は)1名だけという制限はあります。

*特別養子縁組の場合等税務上の例外があります。

普段付き合いがなくて話しづらい兄弟姉妹がいますが弁護士に代わりに交渉してもらうことはできますか?

 はい、共同相続人の中に長く付き合いがない人がいる、性格的に苦手な人がいる、等の理由で直接の協議が難しい場合には、弁護士に依頼するということは合理的な選択だと思います。弁護士に依頼すれば、弁護士が代わりに交渉しますので、ご本人様は他の相続人と話す必要がなくなります。

遠方にいる他の相続人との話し合いが面倒なのですが、それだけの理由でも弁護士に依頼できますか?

 はい、弁護士は代わりに交渉などを行うのが仕事なので、「自分で交渉するのが面倒」というような理由でご依頼頂いても全然問題ありません。弁護士にご依頼頂ければ、相手方が遠方に住んでいる場合でも郵便や電話などで話し合いを進めていきます。合意が成立したら、遺産分割協議書を取り交わしますが、それも郵便で行うことができます。このように、距離は障壁とならず、遠方の共同相続人との交渉も弁護士が代理人として進めていくことができます。ご本人様は、自分が依頼した弁護士と打ち合わせをする必要はあるものの、他の相続人と直接話す必要はなくなります。

相続人の中に認知症で話し合いができない人がいますが、遺産分割できますか?

 相続人の中に認知症で判断力がない人がいる場合、その方に成年後見人が選任されれば、後見人を相手に交渉や調停を行うことで遺産分割をすることができます。成年後見人選任の申し立ては一定範囲内の親族等が家庭裁判所に対して行うことができます。

 ただし、成年後見人が選任されると、遺産分割の話が終わったからといって解除できるわけではなく、その事由がなくならない限り、選任されたままなので、後見人の負担(弁護士や司法書士などの職業後見人を選ぶ場合は費用負担)も考えて検討する必要があります。

 また、後見人は被後見人(本人)の利益のために行動する義務があるので、基本的に法定相続分を割り込む内容で合意することは難しいと考えられ、本人が行う場合と比べて柔軟な解決が難しいという難点はあると言えます。

相続人の中に行方不明の人がいますが、どうしたらよいですか?

弁護士にご依頼いただければ、戸籍を辿って附票を請求するなどの方法でできるだけ住所地が判明するように努めます。しかし、それでも見つからない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるか、失踪宣告の申し立てを行う、という方法が考えられます。

 不在者財産管理人の選任は、行方不明の人がいずれ戻ってくることを念頭にしたものであり、一方、執行宣告は死亡を擬制するものであるので、要件も効果も違います。したがって、その状況に応じて適切な方法を選ぶ必要があるので、まずは弁護士にご相談頂くのが良いと思います。

 

相続で揉めたら裁判をするしかないんですか?

まずは話し合いで解決を試みることも重要です。弁護士が代わりにお話しすることもできます。それでもうまくいかない場合、一般的には、まずは調停を申し立てることになります。調停で合意に至らない場合には審判に移行することとなります。このように、遺産分割については、地方裁判所の民事部での裁判ではなく、家庭裁判所の調停・審判、という形で解決する仕組みになっています。

(最初から審判を申し立てることも制度上はできますが、その場合は調停に付されるのが原則なので、特別な事情がない限りはまず調停を申し立てます)

*審判結果に対して適法な即時抗告がなされれば、高等裁判所で審理されますので、家裁で完結するとは限りません。

*遺産の範囲、相続人の範囲、など遺産分割の前提問題について争いがある場合は、通常の訴訟を先行することになります。

 

調停をすると何年もかかると聞きましたが、本当ですか?

平成19年度の統計によると、6割以上の案件は、申し立てから1年以内に終了しています。個別案件によりますが、一般的にいえば、数年かかるケースは稀といえるでしょう。

 

調停をしても決着がつかなければどうなるんですか?

調停が不成立になると自動的に審判に移行します。審判では裁判所が分割内容を決めるという形で強制的に決着が図られます。もっとも、審判に対しては、即時抗告という、異議を申し立てる手続きはありますが、申し立てないままに期間が過ぎてしまうと確定します。また即時抗告を申し立てても、高等裁判所で棄却された場合は、最高裁への許可抗告や特別抗告をしない限り、確定します(許可抗告や特別抗告により変更されるケースは希です)。

 

調停がうまくいかないとき、何回くらいで審判に移行しますか?

 調停が不調で終わると審判になりますが、何回の期日まで行なってまとまらないと審判になるかは、場合によります。基本的に、申立人は話し合いをするために調停を申し立てるわけですが、他の相続人が全然話し合う気がなかったり、意見の開きが大きすぎて合意に至る可能性がほとんどないと考えられる場合は、3回程度で打ち切られることもありえます。一方、もともと協議すべき事項が多く相続人の人数も多い場合のように性質上時間がかかることもやむを得ない場合には10回以上の期日が重ねられることもあります。

 例えば、遺産に含まれる不動産が居宅のみならずアパート、駐車場、農地、など多数に及び(そうするとそれらの不動産の評価をめぐっても検討が必要になる。また、相続人のうちだれがどこを相続したいのかという希望も含めて意見を調整していく必要がある)、相続人の一人が被相続人と同居して面倒を見てきた事実があり(寄与分の主張が出されることが多い)、相続人のうち1名だけが大学に進学していて(特別受益の主張が出されることもある)、そして、相続人は全部で5人以上いる、というようなケースでは、全員が納得する案に至るには協議しないといけない事項が多く、そうすると、かなり多くの期日を重ねていくことになる場合もあります。

 ただ、遺産が多数あり相続人が多ければ必ず長期化するというわけではなく、結局のところ、当事者の考え方によるところも大きいと思います。

 裁判所(調停委員会)は、まとまる可能性がある程度あるなら調停を続ける、無理だと判断したら不成立として審判移行する、というのが基本的な考え方だと思われます。したがって、まとまる見込みがない場合には、少ない回数で調停は不調とされて審判に移行することもあり得ます。

 

遺産分割の調停はどこでするのですか?

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行なうのが原則です。したがって、東京に住んでいる相続人が大阪に住んでいる相続人を相手に遺産分割の調停を申立てるのであれば、大阪家庭裁判所に申し立てることになります。

 もっとも、手続きとしては相手方の住所地の裁判所に申し立てざるを得ないとしても、遠方の場合は、実際にはその裁判所に行かずに電話での調停ができる場合もあります。電話調停を行うかどうかは裁判所の判断になりますが、遠方の場合は認められることが多いです。

 電話で行う場合は、代理人弁護士の事務所と裁判所を電話でつないで行うことになります。その場合、相続人本人は依頼している法律事務所の行き、そこで弁護士とともに、裁判所と電話で話すことになります(電話はマイク、スピーカー機能を使うことで、受話器を持たずに通話ができます)。

なお、弁護士に依頼していない場合は、ご自身が近くの裁判所に行き、事件が継続している裁判所との間で電話をするという仕組みになっているようです。

 

立川で父母と同居していましたが、父が亡くなりました。兄弟は名古屋と仙台に住んでいます。立川の家庭裁判所で遺産分割の調停を行うことはできないのですか?

 この場合、相続人の一人であるお母様が立川に住んでいるため、東京地裁立川支部に管轄があるので、立川で遺産分割調停を行うことができます。

 ただし、名古屋に住んでいる兄弟が先に仙台家裁に申立てをしたり、仙台に住んでいる兄弟が先に名古屋家裁に申立てをしたりした場合は、その場合も管轄があるので、調停が始まってしまい、そうすると、立川支部で行うことはできなくなります。

立川で父と同居していましたが、父が亡くなりました。母はすでに亡くなっていました。兄弟は名古屋と仙台に住んでいます。立川の家庭裁判所で遺産分割の調停を行うことはできないのですか?

 この場合は、遺産分割調停の管轄は名古屋と仙台になります。したがって、立川の家庭裁判所で遺産分割調停を行うことは基本的に難しいです。ただ、他の相続人が同意をした場合は、可能です。

 ただ、遺産分割審判の場合は管轄は被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所なので、この場合、立川に管轄があります。立川の家庭裁判所に審判を申立てるということは可能です。ただ、一般的に考えると、調停に付される可能性が高く、その際に調停の管轄がある裁判所に移送される可能性もあります。

 また、他の相続人が立川の家庭裁判所に遺産分割調停を申立てた場合は、管轄があるので、当然、そのまま進められるでしょう。ただ、これは他の相続人の行動に左右される話なので、やはり、確実に立川で行なうことができるというわけではないです。

調停ではなく裁判をするべき場合もありますか?

 例えば、遺産の範囲に争いがある場合は、先に裁判をして決着しておく必要があります。なぜなら、家庭裁判所の審判には遺産の範囲について確定的に決める力(既判力)がなく後から裁判をされると審判の前提とした事実を覆されてしまう恐れもあるからです。そうなると審判が無駄になってしまうので、前提となる権利関係に争いがある場合は先に裁判をしてそのような争いの元をなくしておく必要があるわけです。

 

遺産分割の際の不動産の価格は相続税の評価額ですか?

相続人間で合意できない場合に審判で判断してもらうのであれば、原則として、鑑定人による評価によることになると考えられます。これは、裁判所の委託を受けて不動産鑑定士が行うもので、専門的見地から評価が行われますが、必ずしも相続税のための評価額とは一致しません。鑑定のためには、当事者が鑑定の申立てをすることになります。費用は鑑定申立てをした相続人が払うのが原則とされていますが、合意の上、遺産から差し引くという扱いをすることも多いです。ちなみに、鑑定費用は数十万円程度のことが多いですが、遺産である不動産物件が多いとさらに増える可能性もあります。

 また、任意の話し合いや調停の段階であれば、市場価格(民間不動産業者による査定)を利用したり、相続税の評価のための路線価を利用することもあります。

 

仕事を辞めて被相続人の面倒を見ていたのだけど、遺産を多くもらえませんか?

内容次第では、寄与分があるとして多めにもらえる可能性はあります。寄与分が認められると、その分、法定相続分より多めに受け継げることになります。仕事をやめてまで面倒を見ていたということであれば、可能性はあります(仕事をやめることは要件ではありませんが)。特別の寄与により被相続人の財産の維持や増加に寄与したといえるかどうか、が重要です。詳しくはご相談ください。

*令和5年4月1日施行(予定)の改正法では、寄与分の主張は原則として相続開始(被相続人の死亡)から10年に制限されます。詳しくはご相談ください。

 

相続人の一人だけが先にお金をもらっていたようです。その人は少なめということになりませんか?

 「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」贈与を受けたとされると、特別受益として、その相続人はすでにその分をもらったとして計算することになります。ただし、持ち戻し免除の意思表示がされていたとされると、そのような扱いはされないことになります。  なお、これらは法律上の話であり、当事者の合意でこれと異なる分け方をすることは問題ありません。

 特別受益になるかどうかということで良く持ち出される話としては、1、大学などの学費 2、まとめて贈与 3、継続的な生活費の援助 などがあります。このうち学費については兄弟姉妹とのバランスが問題になります。また、生活費の援助については扶養義務の範囲内かどうかということが問題になります。

*令和5年4月1日施行の改正法では、特別受益の主張は原則として相続開始(被相続人の死亡)から10年に制限されます。詳しくはご相談ください。

 

銀行の預貯金も遺産分割協議が終わるまで引き出せませんか?

はい、近年の判例では預貯金も遺産分割が必要な遺産とされていますので、原則として、複数の相続人がいるときには全員の同意がないと引きだすことはできないと考えられます。ただし、民法改正により、一部については単独でも引きだすことができるようになりました。(法定相続分に基づいた金額の3分の1まで、ただし、1金融機関150万円まで)

 その他、家庭裁判所に調停又は審判を申立てて、同時に、仮分割仮処分を申し立てる方法もあります(家事事件手続法200条3項)。

他の相続人が遠方に住んでいても遺産分割事件について依頼できますか?

 はい、問題ありません。例えば、交渉や調停をしたい相手が関西や九州など遠方に住んでいても、ご相談者様が立川の事務所に来られるのであれば、問題ありません。なぜなら、弁護士は遠方の相手方と電話や郵便で交渉できるからです。

 また、調停の場合も、最近は、遠方の場合、電話調停が認められることがほとんどです。つまり、ご本人様はご依頼の弁護士の事務所に行き、そこと調停が行われている裁判所を電話でつないで期日に出席するという方法が遠方の場合はたいてい認められるので、お住まいの地域の弁護士に相談、依頼することで良いと考えられます。

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