遺留分侵害額請求
Q 遺留分侵害額請求とは何ですか?
A 遺留分を侵害された相続人が、侵害した相続人に対して、侵害額に相当する金額の支払いを求める請求のことです。
Q 遺留分侵害額請求は、遺留分減殺請求とは違うのですか?
A 改正前は遺留分減殺請求と呼んでいましたが、現在の民法では遺留分侵害額請求と言います。内容的には、改正前は行使することで権利関係の変動が生じて遺産である不動産等は共有になると解されていましたが、改正後は金銭債権が発生するのみですので、複雑な権利関係の発生と解消という手間がかからなくなったということが言えます。現在の呼称は、金銭的な請求をする制度に変わったことがよく現れていると思います。
ただ、相続人の貢献の正当な評価や相続人の生活保障のため、という制度の趣旨には変わりはないと解されます。
Q 自分は2名兄弟で、亡くなった父の配偶者(私の母)は健在です。ところが、遺言書では遺産をすべて弟に相続させると書いてありました。遺留分侵害額請求をしたいのですが、私の遺留分はいくらですか?
A あなたの遺留分は遺産全体の8分の1です。なぜなら、この場合の遺留分は法定相続分の2分の1であるところ、配偶者と子2名が相続人である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、残りの子らはそれぞれ4分の1ずつ、だからです。そうすると、被相続人の子であるあなたの法定相続分は4分の1ですから、その半分の8分の1が遺留分となります。
Q 遺留分は法定相続分の半分なのですか?
A 相続人が被相続人の両親のみの場合には法定相続分の3分の1ですが、それ以外の場合は2分の1です。そこで、遺留分を計算するには、まず法定相続分を計算して、そこに上記に応じて、3分の1または2分の1をかければ良いことになります。(例:相続人が被相続人の子ら2名のみのばあい、1名の法定相続分は1/2だから、遺留分は1/4)
Q 長兄が亡くなりました。長兄はずっと独身で子がおらず、また、両親もすでに亡くなっています。当然、私たち兄弟姉妹が相続すると思っていました。ところが、長兄は晩年世話をしてくれていた女性に遺産を全て遺贈するという遺言書を残していました。それでは私たち兄弟姉妹は長兄が親から相続して住んでいた家(実家)も相続できないし、何ももらえないことになってしまいます。遺留分の制度でどうにかできませんか?
A 残念ながら、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありません。したがって、この問題を遺留分で解決することはできないです。まず、その遺言書が有効なのかを検討しましょう。もし無効であれば兄弟姉妹で遺産分割協議をすればよいですが、有効ということであれば、法律上その方が遺贈として実家を含む遺産を受け取ることを阻止することは難しいでしょう。このような事態を避けるためには、生前に長兄とよく話し合っておくべきだったと思います。逆に兄弟姉妹が実家を相続する遺言を書いてもらえると良かったのですが。
Q 遺留分侵害額請求はいつまでに行えばよいのですか?
A 被相続人の死亡と自己の遺留分が侵害されたことを知ってから1年以内に行使しないと時効になってしまいます。また、被相続人の死亡から10年経った場合も同様です。いずれか早いほうで時効になることに注意が必要です。
Q 遺留分侵害額請求はどのような方法で行なえばよいのですか?
A 特に方法は決められていませんが、証拠として残す必要がある関係で内容証明郵便を用いるのが一般的です。その後、交渉で進展しない場合は、訴訟に進めるという方法があります。
Q 遺留分侵害額請求に関して争点になることが多いのはどういうところですか?
A 遺産の評価が問題となることが多いです。すなわち、遺産の中に不動産が含まれていると、不動産の評価方法は、市場価格、固定資産税評価額、路線価、など様々なものがあるため、どの評価方法が妥当かが争われる場合があります。個々の遺産の評価額によって侵害したとされる額が変わってくるので、それが争点になりうるのです。どうしても評価方法について合意に至らない場合は、裁判所により不動産価格についての鑑定が行われる場合もあります。
Q 遺留分侵害額請求を弁護士に依頼すると、何をしてくれるのですか?
A まず、遺留分侵害額請求をすることを内容証明郵便で相手方に伝えます。時効期間が短いから、です。そうして時効にならないようにしたうえで、具体的な請求額を決める作業に進みます。具体的には、まず、遺産全体の額を把握します。資料の収集はご依頼者様にご協力いただきつつ、進めていきます。資料を基にご依頼者様の遺留分の額を計算します。その上で、相続ないし遺贈を受けた額を差し引いて、実際に侵害された額を計算し、相手方に対して具体的な請求をします。交渉は弁護士が行うので、ご依頼者様は直接相手方とやり取りをする必要がなくなります。
なお、交渉がうまくいかなかった場合、通常は、引き続き、調停や訴訟においても代理人として業務を行うことになります。