遺産使い込み

Q 遺産の使い込みとは何ですか?

A 被相続人の財産がおもに特定の相続人によって無断で使用されたり、引き出されてしまうことを言います。厳密には、まだ遺産になる前、すなわち、被相続人の生前に引き出されるケースと、相続発生後に引き出されるケースがあり、被相続人の死亡の前後に渡って引き出されるケースもあります。

Q なぜ遺産の使い込みが起きるのですか?

A ケースによりますが、よくあるのは、被相続人が高齢になり、資産の管理を親族に任せているケースです。適切に管理されていれば問題ないのですが、中には、管理を任された人が無断で引き出して自分のために使ってしまったり、自分の口座に移してしまうケースがあります。もちろん、このような行為は、民事・刑事の両面で違法性があり(ただし、刑事に関しては親族相盗例が適用される場合あり)、してはいけないのですが、残念ながら、そのような事例はあります。

 特に、被相続人が認知症になっていたり、高齢で管理能力が低下していると気が付かないことが多く、結果、亡くなってから他の相続人が不審に思って調べてみて気が付く、という事例が珍しくありません。また、相続発生後(被相続人が亡くなった後)、口座が凍結される前に、同居していた親族等が引き出してしまうケースもあります。これも、窓口であれば銀行員が気が付く可能性も高いですが、ATMを使って引き出されてしまうと、やはり、他の相続人が調べるまで発覚しないことになりかねません。

Q 遺産の使い込みに気が付いたら、返還請求できますか?

A 被相続人が健在だった時期に起きた場合、本来は被相続人が不当利得返還請求や損害賠償請求をすることができます。亡くなったことにより、相続人がその権利を法定相続分に従って相続したということになりますので、相続人は自身の法定相続分に相当する金額について、不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることができます。ただし、時効に注意が必要です。

 また、相続発生後の分についても、同様に請求が可能です。

Q 特定の相続人による使い込みについても遺産分割の調停・審判で話し合えばいいのですか?

A 遺産分割調停の時に主張すること自体は問題ありません。ただ、基本的に、不当利得返還請求として返還請求をすべきものであり(あるいは損害賠償請求という法律構成もありえますが)、遺産分割とは別の手続きとなります。それゆえ、遺産分割の審判では取り扱えません。

Q 使い込みの返還を求める裁判はどこの裁判所ですればいいのですか?

A 法的手続きで回収する場合は、不当利得返還請求訴訟を地方裁判所か簡易裁判所に起こすことになります。地裁と簡裁の違いは、扱う金額です。訴訟物の価額が140万円以上だと地裁、それ未満だと簡裁の管轄となるのが原則です。

 なお、土地管轄は、相手方の住所を管轄する裁判所、自分の住所地を管轄する裁判所、両方にあると解されます。なぜなら、訴訟の土地管轄は、一般に、被告の住所地を管轄する裁判所にあるのですが、同時に、不当利得返還請求権は持参債務だと解され、そうすると、債務の履行地である原告の住所にも管轄があることになるからです。

Q まだ父は生きているのですが、長男が無断で父のお金を使い込んでいるようです。何か取り戻す方法はありませんか?

A この場合、被害者は御父様です。そこで、御父様から長男に対して返還を請求することができます。もちろん、応じてもらえない場合は訴訟をすることもできます。なお、御父様が認知症で判断力がない場合、成年後見申立を行ない、後見人が返還請求をするという方法が考えられます。いずれにせよ、ご本人様がご健在である以上、「本人に戻せ」という請求(あるいは本人に損害賠償として支払えという請求)であり、直接、推定相続人(いずれ相続人になるであろう人)に引き渡すように請求することはできません。

 また、後見人をこのためだけに選任する、ということはできず、一度後見人が選任されれば、被後見人が亡くなるまで後見人は財産の管理などの業務を続けることになります。また、職業後見人(弁護士や司法書士など)には被後見人の資産の中から報酬を払うことになりますので、その点も考慮する必要があります。

Q 使い込みを取り戻すのは何年以内にすればよいのですか?

A 不当利得返還請求権の時効は、法改正前は10年でした。しかし、改正法では、権利を行使できることを知った時から5年 、権利を行使できる時から10年間で時効になるとされています。なお、法改正前に発生した債権については改正前の10年が適用されます。不法行為という法律構成であれば、不法行為の発生と加害者がだれであるかを知ってから3年(ただし、不法行為の時から20年という制限もあります)で時効となります。
 なお、時効の更新(旧法でいう中断)は訴訟提起など特定の行為をしないと認められないので、ご注意ください。

Q 特定の相続人が父の生前に父をそそのかして多額の贈与を受けていました。これって、返すように請求できますか?

A 被相続人の承諾を得てお金をもらっていた場合は、特別受益の問題となります。遺産分割手続きの中で特別受益の主張をしていくことが妥当だと解されます。なお、特別受益に関しては持ち戻し免除の意思表示に注意が必要です。ただし、被相続人に判断力がなかった場合は、使い込みと同様の法律構成が取れる可能性があります。

Q 使い込みはどうやって立証するのですか?

A その当時、被相続人が自分で預貯金を管理できない状態であったことを示す資料(カルテなど)、多額の資金が不自然に引き出されたことを示す通帳の写しや取引履歴、使い込みをしたとされている人による浪費など不自然な資金の使い方を示す通帳など、が重要です。また、その人が被相続人の近くにいて、使い込みをできる立場であったことも示す必要があります。

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