遺言無効確認請求
Q 父が残した遺言ではすべての遺産を長男Aに相続させると書いてありました。しかし、ずっと父の面倒を見てきたのは私なのに、おかしいと思います。この遺言書は偽造されたものだと思うのですが、どのような方法で主張すればいいのでしょうか?
A まず、Aを含む共同相続人全員に遺言は無効であることを前提の交渉をすると良いと思います。それで合意を得られれば、遺言書がないことを前提に遺産分割協議を行うことができると考えられます。ただし、遺言執行者が付いていると、遺言執行者の対応にもよるでしょう。合意内容を調停で明確にしてから遺産分割に進んだほうがトラブルを避けられるかもしれません。
一方、合意を得られない場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことが考えられます。ただ、基本的にはまず調停を行うことになっています。調停を起こして、まとまらなければ、それから訴訟を起こすのが基本です。
Q 公正証書遺言は無効になることはないですか?
A いいえ、公正証書遺言でも無効になることはあります。たしかに、自筆証書遺言のような形式面の不備を理由とした無効は考えにくいですが、遺言能力が欠けていたことを理由とした無効の判断はあり得ます。
Q 遺言能力の問題で無効かどうかの判断がされる場合、どういうことが参考にされますか?
A 遺言者の精神状態(認知症がどの程度進んでいたか、など)、内容がこれまでの経緯に照らして不自然ではないか、作成の経緯、などが重視されると考えられます。診断書やカルテの記載内容、認知症検査の点数、などから遺言能力の有無が判断されると考えられます。
また、内容が不自然だと遺言能力を疑われたり偽造だと判断される方向に働きます。また、作成の経緯に関しては、被相続人が進んで書きたいと言い出したのではなく遺言の存在で利益を得る相続人や受遺者が主導的に遺言作成にかかわっていた場合には、不利な方向で考慮される場合があります。
以下は例ですが、被相続人が認知症で遺言能力が微妙な時に、被相続人がずっと長男と同居していたのに全遺産を次男に相続させるような内容だと不自然だということで偽造の可能性や理解せずに遺言した可能性(遺言能力の欠如)が推認されうるでしょう。ましてや、そのケースで次男が被相続人をそそのかして公証役場に連れて行って遺言が作成されていたような場合には、次男が理解していない被相続人を誘導して遺言書の作成をさせたと判断されて無効になる可能性が高まるでしょう。
但し、遺言能力の問題で無効とされる場合、まず認知症などで判断能力が低下していた事実があることが前提です。判断能力に問題があったことを示す資料が何もないのに内容や作成経緯だけで無効と判断されることは考えにくいです。